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無 垢 / 2022

「 無 垢 」statement

本を読むとき、そこに書かれている情景は、あなたの中であなた自身が思う色に彩られることでしょう。
文章を構築する単語にもそれは言えます。
たとえば「赤い」という形容詞。
「赤い」には鮮やかな「赤い」から燻んだ「赤い」まであって、読む人によって赤には大きな違いがあるはずです。
たとえば「薔薇」という名詞。
「薔薇」にも様々な薔薇があって、読む人によってその姿は違うはずです。
いま「赤い」「薔薇」と書いたことで、あなたの中にはすでにあなた自身の「赤い薔薇」が生まれているはずです。
その「赤い薔薇」はあなただけのものであって、誰にも侵すことのできない情景の一隅となっています。
想起したものは「赤い薔薇」だけではおそらくないでしょう。
その周りには花瓶だったり、光が射し込む窓や、風で揺れるレースのカーテンがあったりしませんか。

「彩書」を発表し始めたときから、この「無垢」はいつか制作しなければ、とずっと思っていました。
従来の「彩書」は、私が彩る世界に誘おうというコンセプトを持つ作品が主です。
それらは細部までつくり込まれた映像のようなものと言ってもいいでしょう。
今展の「無垢」は想像の余地のある文章のようなものです。
鑑賞者であるあなたがあなた自身の彩りを与えて情景をつくり、そこに入り込んでみてください。
内部に入って周囲を見渡すとき、何か思いがけないものを見つけるかもしれません。
その何かを見つけていただけたら、たいへん嬉しく思います。

© 2016 by Ashino Koichi /  書 彩  / Atelier KOY

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